地獄のハイウェイ

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血液型性格判断を拒否するために必要なリテラシー

山形大学大学院理工学研究科の城戸淳二教授という人が
ベネッセのトンデモ本に噛み付いていたのに
血液型性格判断に肯定的だったという話が
一部で話題になっているらしい(lets_skepticさんの記事から知った)。
自分自身の経験から言っても
物理系の研究者でも血液型性格判断について
素朴に受け容れている人は少なくない。
だが、それを単純に科学リテラシーの低さに結びつけることは
必ずしも適当ではないだろう。
というのは血液型性格判断というのは
仮説の理論的な枠組に着目すると
遺伝的多型と性格(行動的特性)に関係があるという
仮説の一つのヴァリエーションであるからだ。

遺伝的多型と性格(行動的特性)に関係があるという考え方は
行動遺伝学を支えている理論的枠組そのものだ。
古典的な双生児研究で性格因子の遺伝率を調べたり、
分子遺伝学と結びついて
ショウジョウバエの行動突然変異体の原因遺伝子を同定したりする
そういう研究分野では当然視されているというか
研究に従事する上で疑われることのない理論的前提である。
そしてこの分野の成果の一部として人間に対しても、
セロトニン・トランスポーター多型と内向性/外向性の関係とか
ドーパミン・レセプターと新奇探索傾向の関係とか
ポピュラー・サイエンス本やTV番組で取り上げられているものもある。
だから血液型と性格が関係しているという仮説を立てても
既存の科学理論体系と反するようなものではない。
むしろ行動遺伝学の実験的検討に値する科学的仮説の構造をしていると見なすべきだ。
だから科学的な思考ができれば自動的にリジェクトできるものではない。

また、性格判断全体にいえることだが、
いわゆるバーナム効果
記述された性格が自分に当てはまっているような印象を受けがちであるから
その妥当性を疑う機会がほとんど訪れない。
バーナム効果については次のサイトが興味深い、http://www.senrigan.net/bloodmind/index.html
また、血液型性格判断に関しては、
現時点では「世間一般に普通に流通している考え」つまり常識と化しているため、
積極的に疑おうとする人はどうしても少数派になる。

積極的に情報を収集すれば血液型と性格の関連を支持する報告がほとんどなく、
仮説としては支持されないということは分かるかもしれないが、
トンデモとか疑似科学全般に興味を持っている人ならともかく、
そこまでのコストを掛けて情報収集をしようという人は多くはないだろう。
だから相当に科学的リテラシーが高くても
血液型性格判断」を受け容れている人がいるのは不思議でもなんでもないと思う。