地獄のハイウェイ

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ホメオパシーの類似の原則を再考する

ホメオパシープラセボ以上の効果を持たないのは、
その2大原則のうち極限的な希釈を繰り返しても効能が残るとする
最小投与の原則が、はっきり言って全くのナンセンスだからだが、
一方、その名称の由来ともなっている類似の原則(類似の法則)の方には、
合理的な再解釈の余地がある。

この類似の原則は「類似したものは類似したものを治す」というもので、
つまり健康な人に投与した時に、ある病気に似た症状を起こす物質に、
その病気を治す薬として効能があるという考えだ。

ネットでざっと調べた範囲では指摘はあまり見掛けないが、
実は、進化医学とかダーウィン医学とか呼ばれる考え方に、
類似の原則に通じるような見解が含まれている。
それは、病気の症状の一部は生体の適応的な防御反応だから、
そのような症状を抑制しない方が良いというものだ。

発熱とか下痢は病原菌の抑制や毒物の強制排出の作用があるので
そういう症状を抑えない方が病気が早く直るという話が、
ネシーとウィリアムズの「病気はなぜ、あるのか」に紹介されている。
「ある研究では、水痘にかかった子供が、アセトアミノフェンを飲むと、偽薬(砂糖でできた錠剤)を飲んだ子供より、治るのに平均して約一日長くかかった。」(邦訳p.41)
「(前略)ひどい下痢をおこす赤痢菌の一種を与えた。下痢を止める薬の処方を受けたものは、そうでないものに比べて、熱と中毒症状が二倍も長く続いたのである」(邦訳p.57)

ある症状が適応的な反応である場合には、
その反応をコントロールし、時には症状を強化することで、
病気の治癒を促進することもあるのだろう。
そういうことを考えると、
いつでも成り立つわけではないが、
類似の原則を合理的に再解釈することは可能だ。
またそのような場合には、
症状を抑えようとする治療(ホメオパシー側のいうところのアロパシー)は
病気を治す上で良くないかもしれない。
そうなるとただの砂糖錠を与えた方が、
しかも症状を強化する方向に暗示を与えた方が
治癒が早いかも知れない。

ホメオパシーを擁護しようという気はさらさらないが、
症状が適応的であるかどうかまで考慮した上で検討を加えると
これまでとはまた違ったものが見えてくるかもしれない。