地獄のハイウェイ

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日本学術会議会長談話に見るダブスタ:低線量被曝とホメオパシー

日本学術会議会長だった(6月19日付で70歳定年制により退任)金澤一郎は、
退任2日前の6月17日に「放射線防護の対策を正しく理解するために」という会長談話を出した。
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-21-d11.pdf
これに対して自分は批判した記事( 「日本学術会議会長談話を批判する」)
を書いたが、自分が金澤一郎の出した学術会議会長談話に触れたのは初めてではない。
10ヶ月程前になるが2010年8月24日に公表された
「「ホメオパシー」についての会長談話」(http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-21-d8.pdf
についても記事(「日本学術会議会長がホメオパシーを否定 」)を書いている。
ホメオパシーについては新生児ビタミンK欠乏性出血症死亡事故が
社会問題になったのが一つの大きな切っ掛けだったと思うが、
その頃は、金澤一郎の学術会議会長談話は色々な方面から絶賛だった。

ところで金澤一郎は今回の談話では
新生児ビタミンK欠乏性出血症は母乳栄養児1700∼2000例に1例といった頻度だそうだ。
http://www.jsog.or.jp/PDF/62/6209-293.pdf
2000人に1人という頻度を確率で表現すると0.05%である。
一方で金澤一郎が
「すなわち、100 mSv では0.5%程度の増加と想定されますが、これは、10 万人規模の疫学調査によっては確認できない程小さなものです。」
と評価している低線量被曝の死亡リスクは0.5%である。
この0.5%という死亡リスクは
ホメオパシーに頼ることによって、確実で有効な治療を受ける機会を逸する可能性があることが大きな問題であり、時には命にかかわる事態も起こりかねません。」
といって脚注で言及している新生児ビタミンK欠乏性出血症の発生頻度よりの10倍近い。

状況に違いがあるとはいえ
ホメオパシーに対する場合の「命にかかわる事態」の評価が
低線量被曝の健康被害について拘わる場合と全然違うのは、
ダブスタであるとしか言いようがないではないか。