昨年の小惑星探査機「はやぶさ」の帰還は大きな話題になった。
数々のトラブルに見舞われながらミッションを完遂した
プロジェクト・チームの不屈のエンジニア魂に
感銘を受けた人も多かっただろう。
だから「はやぶさ」の物語が
科学技術振興の文脈で取り沙汰されるのは当然だろうし
それを否定する気もさらさらない。
しかしながら、
これは純粋の科学というよりも技術的チャレンジの物語だ。
直接の実用の役に立たない惑星科学が、
宇宙技術の開発を促したのかもしれないが、
純粋科学としての価値はそれとはまた別の話になる。
イトカワへから得たサンプルが、
非常に貴重なものだということは否定しない。
だがどのような科学の進歩に寄与するのかは、
素人の自分には良く分からない。
同じように貴重なサンプルである
アメリカのスターダストでヴィルト第2彗星の尾から採取された塵と比べて
一体どんなものなのだろう?
それを言うなら自分の子供時代の
バラ色の科学技術の象徴だったアポロ計画によって、
月から持ち帰られたサンプルによって、
惑星科学は進歩したのだろうけれど
自分の不勉強もあって、
やっぱりそれもよく分からない。
ひねくれものの自分は、
掛け値なしの科学的価値に関する正直な告白が聞きたい気分がする。
サイエンス・コミュニケーションの現場では、
プロジェクトX式の感動の物語の紹介ばかりではなく、
こういういささかシニカルな疑問にも向き合ってくれるのだろうか?