今から20年以上前、自分が学生だった頃、
研究室に北京大学の研究者が
長期滞在の共同研究に来ていて仲良くなったことがある。
この人は文革の知識人下放政策で、
炭鉱で労働させられたつらい経験から
中国共産党に対しては批判的だったし、
当時、評判を取った映画『紅いコーリャン』についても
「欧米人は珍しいから喜んでいるだけでつまらない映画」とか言って
自国文化にも醒めた視点を持っていた人だった。
自分も遠慮のない学生だったので、
その人とは本音で言いたいことを結構言い合ったりしていた。
ところがそういう知識人であっても、
「琉球は中国に属する」とか言ったりしていてびっくりした。
なんでもその人もその子供も教科書でそう習ったということだったが、
沖縄の歴史に全く無知だということでもなくて
明治期の琉球処分で一部の人が
琉球の独立を求めて清に援助を求めたことなども
その主張の根拠としていた。
自分も空手への興味から沖縄の歴史について多少齧っていたから
清へ亡命した沖縄の人の話も知っていたので
「そういう人もいたけど多数派ではない」と反論したり、
清に朝貢していたのだから「独立していて中国領ではない」と反論したり
琉球語は日本語と同系統の言語だといったことを説明したら
幸いにも概ね納得してもらえた。
20年以上前のこういう経験から
中国人は沖縄は中国のものだとか主張するのが普通だと思っている。
自分の場合は相手が冷静で中国政府に批判的な知識人であったし
話せば分ってもらえたけれど
最近の謙虚さも薄れた一般中国人には話が通じるとは思っていない。