地獄のハイウェイ

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余ハ如何ニシテSTAP懐疑派トナリシ乎

STAP細胞スキャンダルの件についてだが、
自分は当初、理研のプレスリリースを真に受けて
世紀の大発見!」などと興奮していたが
画像加工の噂が出てからミスコンダクトを確信してからも
それでも「画期的な研究内容」だと思っていたが、
今では全く信用していない。
何かイレギュラーな結果があって
それを著者らが誤認したりしている可能性までは否定しないが、
それもほとんどないのではないかと疑っている。
何故そう思うようになったかと言うと、
画像加工の話が出たNature 505, 641–647 (2014)のFig.1iの
研究上の位置づけについての判断に基づいている。

実はこれまで良く知らなかったのだが
成体由来の多能性幹細胞については先行研究がある。
東北大の出澤真理が発見したと報告しているMuse細胞というのがあって、
http://www.stemcells.med.tohoku.ac.jp/outline/index.html
STAPのNature論文でも文献23としてreferされている。

"In addition, genomic rearrangements of Tcrb (T-cell receptor gene) were observed in Oct4-GFP+cells derived from FACS-purifiedCD45+ cells and CD90+CD45+ T cells (Fig.1i, lanes 4, 5, and Extended Data Fig.2e–g), indicating at least some contributionfrom lineage-committed T cells. Thus, Oct4-GFP+ cells were generated de novo from low-pHtreated CD45+ haematopoietic cells by reprogramming, rather than by simple selection of stress-enduring cells23."


T細胞受容体遺伝子の組み換えが起きているので、
Muse細胞のような元々あった多能性細胞を選別してきたのではなく、
リンパ球が脱分化を誘導されて生じた多能性細胞だと主張しているのだ。
こはちょうど理研のプレスリリースの
「次に、リンパ球の特性を生かして、遺伝子解析によりOct4陽性細胞を生み出した「元の細胞」を検証しました。リンパ球のうちT細胞は、いったん分化するとT細胞受容体遺伝子に特徴的な組み替えが起こります。これを検出することで、細胞がT細胞に分化したことがあるかどうかが分かります。この解析から、Oct4陽性細胞は、分化したT細胞から酸性溶液処理により生み出されたことが判明しました。」

http://www.riken.jp/pr/press/2014/20140130_1/
に対応する。
要するに「STAP細胞って、実はMuse細胞と同じじゃない?」という疑問に、
そうではなくて「新規の発見」なのだと主張する証拠として
Fig.1iは位置づけられているわけだ。
自分達の発見した現象が既知のものと異なるものだと主張するための大事な証拠。
そういう「新規性」を主張するための大事な証拠であるFig.1iで
ゴマカシを疑われるような画像加工したりして嫌疑を受けるというのは、
肝心な部分でヘマをやって研究に味噌をつけて台無しにする失敗。
こういう大失敗を「些細なこと」と言い訳したりするような研究者を
信用してくれというのは虫が良すぎる。
少なくとも自分はこういう研究者を全く信用することができない。
これが自分がSTAP細胞懐疑派に転じた次第だ。