地獄のハイウェイ

科学・技術や趣味のことなど自由気ままに書き散らしています。

そもそも酒を造っているのは人間じゃない

「これは「獺祭ショック」である――テクノロジーで作った酒は酒じゃない!?」
http://jp.techtimes.com/articles/10431/20151001/sake-dassai.htm
という記事が話題になっていることを知った。
記事では「酒造の技術をコンピュータで分析し、全工程をIT化したのである」
となっているが、多くの酒造メーカーで製造工程のIT化は行われているから
この辺はちょっと事実誤認か誇張が含まれているような気がしないでもない。
たぶん日経コンピュータの「最高の酒に杜氏はいらない 「獺祭」支えるITの技」
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO83592100U5A220C1000000/
といった記事が人気ブランドの吟醸酒製造のIT化を誉めそやしているので
それを受けてのことではないかとも思う。
製造工程の自動化で高級ブランドの日本酒製造が上手く行っているのことは
それはそれですごく素晴らしいことだが
製造工程の自動化それ自体は獺祭の旭酒造の独創というわけではない。
ネットで調べれば例えば北関酒造のような事例も見つかる。
http://www.kennan-syuhan.co.jp/brewery/035.html
自動化の内容については佐賀県工技センターの報告書などが参考になるだろう。
http://www.saga-itc.jp/var/rev0/0002/7735/17-11p40-43.pdf
ただそういったこと以上に自分にとって気になったのは獺祭ショックの記事の末尾の
「人間が作ろうとコンピュータが作ろうと、酒は酒である」という言葉。
自分が最初に転職した際の転職先の上司に日本酒の専門家がいたのだが
色々と教わっているときに言われたのことの中で印象が強かったものに
「酒を造っているのは酒母(注:酵母のこと)で人間やないねん。人間は環境整えてるだけやねん。」
というのがある。
そもそも酒を造っているのは人間でも機械でもないのである。