地獄のハイウェイ

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博士号取得者のキャリアパス問題

博士号取得者のキャリアパス問題について考えてみた。
そこで問題になっているのは概ね、
博士号取得者の就職するアカデミアのポストが少ないし
民間企業の博士号取得者の採用が低調なので
就職に困る博士号取得者が大量に出て困る、
という話である。

文部科学省科学技術政策研究所の調査資料
「博士号取得者の就業構造に関する日米比較の試み」(平成15年12月)
というのがある(概要は下記のアドレスで公開されている)。
http://www.nistep.go.jp/achiev/abs/jpn/mat103j/pdf/mat103aj.pdf
表2では「日本における博士課程修了者の職業別就職状況(平成14年度)」
というのがあって博士課程修了者は総数10,032人
そのうち保健系(要するに医歯薬系)が4,310人で最も多く
工学系3,073人、理学系1,607人、農学系1,042と続く。
同じ平成14年度の自然科学系大学の学部卒業者数が168,108人。
(人数は平成14年度「科学技術の振興に関する年次報告」による)
学部卒の17分の1強の博士課程修了者が出ている計算になる。
これを多いと見るか少ないと見るかは立場によって違うだろうが、
それなりの人数の博士が毎年生み出されている。
このうち全体の4割以上を占める保健系については
医師、歯科医師、薬剤師といった資格を取得している場合も多いだろうし
(特に医師などはいわゆる「食える資格」なので)
キャリアパス問題がそれほど深刻であるとは思われない。
(実際74%は何らかの就職ができている)
また民間企業への就職を見てみると(「・・就業構造」表3参照)
工学系は製造業等(通常はサービス業に分類される運輸・通信、卸・小売業等を含む)が
790人だから3,073人のうち25.7%が民間企業に就職できていることになる。
農学系は製造業等113人だから1,042人中10.8%、
理学系は製造業等167人だから1,607人中10.4%である。
就職率だけで見ると工学系56.0%、農学系52.3%、理学系50.0%となる。

ポスドク等(統計上は研究生・無業者等)を経て就職する場合の数値がないので
誇張されている傾向はあるにしても、
博士をとっても食えないというのは実情のようである。
ただ医歯薬系に次いで多い工学系(全体の3割)の就職者の
半分近くは民間企業等に就職しているのだから、
博士課程修了者も結構採用されていると言えるだろう。
キャリアパス問題で、
「民間企業が博士を採用する気が無い」といわれるのは
主に理・農学系の話だと思う。
民間企業から見れば工学系も理・農学系も同じような「博士」なので
闇雲に企業に「博士を採用しろ」と迫っても
多くの企業関係者とは話が噛み合わないのではないだろうか。