地獄のハイウェイ

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バイオは産業界での就職は極めて困難

日本生物工学会誌第86巻第4号の192~193ページに
「博士の生き方」主催の奥井隆雄さんが
「若手研究者がキャリアパスを描く上で必要なこと」という文章を寄せておられる。
その中に総務省統計局の「科学技術研究調査報告」を基に作成された
専門別の研究者数という表があった。
非常に興味深いので、ここでも紹介したいと思う。

平成18年のデータで大学の研究者数(ポスドクや博士課程の学生を含む)は、
 生物系5,840人、化学系4,564人、数学・物理系11,157人、工学系48,273人
公的研究機関の研究者数は
 生物系2,474人、化学系3,688人、数学・物理系2,767人、工学系14,927人
そして企業の研究者数は
 生物系6,165人、化学系54,981人、数学・物理系20,583人、工学系393,769人

これを大学の研究者数を1として表すと
公的研究機関の研究者数は
 生物系0.42、化学系0.81、数学・物理系0.25、工学系0.31
そして企業の研究者数は
 生物系1.06、化学系10.05、数学・物理系1.84、工学系8.16
となる。

化学系や工学系は企業研究者のほうが大学の研究者よりもはるかに多いのに対して、
生物系では企業研究者と大学の研究者の数は似たり寄ったりである。
大学の研究者に対する公的研究機関の研究者の比率ではそこまでの差はないから
生物系分野において企業に「研究者」として就職することの難しさが
他の分野の比ではないというのがよく分かる。
(数学・物理系と比べても就職の厳しさは突出している)
たとえ企業の研究者数が倍になったとしても
現在の数学・物理系と大して変わらないのだから
状況が急速に改善するとはとても思えない。
それに企業の生物系研究者というのは
生物工学会のようなかなり実学サイドの学会に属している人が多いと考えられるから
基礎バイオ系の企業研究者がどれだけかと思うと
その分野の学生にとっては恐ろしい就職難だというのは間違いない。