地獄のハイウェイ

科学・技術や趣味のことなど自由気ままに書き散らしています。

医者と学会

 Yosyanさんという方の「新小児科医のつぶやき」というBLOGサイトの、2006年10月27日付けのエントリ「なるほど」の中で、以下のような文章を見た。


医者の議論は一般の方々が考えられているより遥かに辛辣で厳しいものです。学会発表という公式の場で、面と向かって痛罵されることも珍しい風景ではありません。
(中略)
私の感想は、基本的にそこの管理人が医者かどうかから興味が湧く内容です。医学的主張もそうなんですが、議論の進め方が医者らしく無い様に感じます。よければ暇つぶしにどうぞ、
http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20061027

 このエントリの対象となっているのは、奈良の大淀町大淀病院で意識不明となった妊婦の搬送先を探すのに手間取って搬送先の病院で死亡した事件で医療ミスがあったか否かを巡る議論で引用したところは大淀病院側に過失ありとする意見に対してのYosyanさんの感想だ。

(この件では医療ミスの有無よりも緊急医療体制の不備の方が深刻かつ重要な問題と思う)


 医者の世界はギルド社会とも呼ばれる特殊な業界であることも関係するのだろうけれど相手が「医者」であるかどうかというのは彼らにとって重要な項目であるようだ。だが、医師だからといって水準の高い議論ができるとは限らないと思うのだ。

 自分の経験から言えば医師の学術レベルは「ピンキリ」だと思う。一般的な医師に関して言えば、学術的なレベルの議論に関して、水準に達していない人も少なくないように感じる。まず開業医の一部には学会で研究発表しないどころか加入していない人もいるだろう。
 また津田敏秀の「医学者は公害事件で何をしてきたのか」
http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/02/8/0221410.html
で名指しで批判されているような医学者達もいる。
 いい加減なインチキ療法やトンデモ療法の提唱者もいる。例として三余亭さんが「移植学会未加入の医師の移植手術を止められるか」
http://cuttlefish.at.webry.info/200610/article_4.html
で紹介されているような有効性が証明されていない医療を行う医師の存在を挙げておく。
 それに、個人的な話で恐縮だが、IUBMB(International Union of Biochemistry and Molecular Biology)の酵素命名法(enzyme nomenclature)を無視して、ある酵素に割り当てられている酵素名を別の酵素を指すのに使って自分達の雑誌に投稿する医学系研究者のせいでPubMeDで検索するときに"NOT ○○"を追加させられたりしたりとかいう経験もあって医師の学術レベルには、かなりの高低差があるように思っている。  

 自分が「一般の方」に入るのかどうか良くわからないが、近親者に医師がいるので医療関係者の苦労も多少は聞き知っているとはいえ医者ではないのだからそういうことにしておく。