地獄のハイウェイ

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疑似科学批判からニセ科学批判への変遷

ネットでの疑似科学批判に自分なりに参入し始めた数年前と現在では
ニセ科学を巡る状況が大きく変化したと思う。
自分が参入した頃には「疑似科学」という言い方が一番ポピュラーだった。
そのころ疑似科学問題で参考にしたのは大豆生田利章さんの
「ネットワーク上の著作物」だった。
http://www.glycine-max.com/~mame/doc/doclist.html
その頃は代表的疑似科学として
相対性理論は間違っている」(いわゆる相ま系)とか
(日本における疑似科学批判者としては松田卓也さんが著名だった)
根本主義キリスト教系の「創造科学」であるとか、
(現在は「インテリジェント・デザイン説」が話題の中心)
血液型性格判断とかそういうものが挙げられていた。
(インチキ療法は医事関連の法令が絡むので別枠扱いだったようだ)

ところが最近は「ニセ科学」という用語の方が良く普及しているようだ。
これには菊池誠さんの「ニセ科学入門」などが
http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/nisekagaku/nisekagaku_nyumon.html
より否定的ニュアンスを強調する形で
ニセ科学」という用語を打ち出してきたのが大きいのではないかと考えている。
ニセ科学批判批判とかいう文脈で真っ先に言及されるのが
菊池誠さんであることもこの推測を裏付けていると思う。
そして「ニセ科学」という用語が主流になってくるにあたり、
ニセ批判の焦点となってきたのは「水からの伝言」であることは
多くの人の共通する認識だろう。
そうであれば「疑似科学批判」から「ニセ科学批判」への変遷にとって
水からの伝言」が中心的な役割を担ったのではないかと考えるのは
極めて自然な認識ではないだろうか?

水からの伝言」が単に一過性のブームであれば
例えばグラハム・ハンコックの「神々の指紋」と同じ程度の
疑似科学批判が発生しただけだったかもしれないが、
TOSS(教育技術法則化運動)が「水からの伝言」を道徳教育の素材とすることで
「教育現場への侵入」という事件が発生したことが原因になって
ニセ科学批判がそれまでの疑似科学批判と異なった様相になったのではないかと思う。
しかもそれは「道徳教育としてのニセ科学の侵入」という
それまでの疑似科学の事例とは一線を画する事件だった。
(TOSS関係の疑似科学では「EM菌」があるがこれはあまり話題になっていない)
そのためそれまで疑似科学に無関心だった層にも
水からの伝言」の蔓延を座視することができないという危機感が広がり
それまでの(いささか趣味的な)疑似科学批判を越えて
ニセ科学批判が(それまでと比べて)盛んになり、
それに応じる形で「ニセ科学批判批判」も増えたのではないかと考えている。