地獄のハイウェイ

科学・技術や趣味のことなど自由気ままに書き散らしています。

陰謀論ではないけれど(Part2)

足利事件のDNA鑑定については最近何回か取り上げているが、
またまた後ろ暗いものを感じる情報に触れてしまった。

河野太郎議員のブログの2009/6/25付けの記事「DNA鑑定」の
http://www.taro.org/blog/index.php/archives/1078

補正予算の中に、警察庁の「DNA型鑑定による性犯罪等の検挙」59億7600万円という項目がある。

都道府県ごとに、DNA型鑑定装置2台、DNA抽出装置3台、データ解析装置4台、PCR装置4台、DNA定量装置1台を設置する予算だ。」


という部分だ。
河野議員の記事は国籍法改正に絡めてこのDNA鑑定を使えという話だが、
それは自分がここで論じようというのとは別の話だ。
自分が論じようというのは、警察庁がDNA鑑定装置の予算を確保したというところだ。

まず断っておくが、DNA鑑定が犯罪捜査に役に立たないとは思わないし、
犯罪捜査に役に立つ装置の導入に反対しているわけでもない。

マスコミの提供する足利事件のDNA鑑定を巡るストーリーは
「19年前の精度の低いDNA鑑定で有罪とされた菅家さんの無実が、
 精度を向上させた最新のDNA鑑定によって明らかにされた」

というものだが、これが全くのデタラメで
「19年前の恣意的なDNA鑑定が有罪の証拠とされた」というのが真相らしいというのが
先日も書いた自分の判断である。
もちろん技術進歩によってDNA鑑定の弁別力は向上しただろう。
しかし19年前の鑑定でも生データをまともに解釈すれば冤罪は防げたはずだ。
DNA鑑定の弁別力の向上によって無実が明らかにされたとするストーリーは
大型予算の獲得のタイミングに合わせた最新の科学捜査の成果の宣伝のようで
19年前にDNA鑑定の全国配備の予算確保のための実績が求められた話を思い出させる。

事実関係を述べると、
補正予算の国会提出が4月27日、成立が年5月29日で
足利事件のDNA再鑑定の決定が昨年12月24日、再鑑定の結果の提出が5月9日。
偶然なのかもしれないが検察側鑑定人が19年前の鑑定を否定するのを
抑制するような力は働かない状況ではあったようだ。

因みに警察庁の平成21年度補正予算の資料は次で見ることができる。
http://www.npa.go.jp/yosan/kaikei24/21hosei.pdf