地獄のハイウェイ

科学・技術や趣味のことなど自由気ままに書き散らしています。

話を摩り替えるなよ

西田亮介という人が
「「御用学者」とは誰のことか」
http://webronza.asahi.com/synodos/2011041900001.html
http://synodos.livedoor.biz/archives/1739790.html
という記事を書いている。
福島第1原発の事故で「御用学者」という言葉が注目を集めたから書いたのだろうが、
「「御用学者」とは特定の利害関係に密接に関わる研究者を意味する」
という文章の最初から2つめの文から我流「定義」で目を疑う。
御用学者とは標準的な用法は
「時の政府や権力者に迎合して、その利益となる説を述べる学者」であって、
kotobank.jp

 
言い換えるなら「曲学阿世の徒」とか「茶坊主」とかそういった類のものだ。
西田が言うような学生運動や大学紛争の文脈のなかで」生じたものではなく、
ネットでさっと検索しても
例えば大町桂月(1869~1925)の「武士道から見た日本の国民性」という文章の中にも
「徂徠は豪いことは豪いが、御用学者で、曲学阿世の風を免れない」
と言った用例を見つけることができる。

そもそも国立大学だの国研だのは国から研究資金をもらっているのであり、
国家権力の経済的利害関係と無縁ではないが、
誰もそれだけでは「御用学者」呼ばわりはされない。
原発関連だったら阪大の故・久米三四郎とか
最近なら京大原子炉研の今中哲二とか小出裕章とかいった人は
「御用学者」呼ばわりされるだろうか?

西田の言うような産学連携とか利益相反と御用学者を結びつける理解は特殊過ぎる。
そんな考え方をしている人は極少数だろうに、
それを批判するのは、いわゆる「藁人形論法」の類で
最近の御用学者批判を低レベルだとでもしたいかのように勘繰れてしまう。

それに近年の資金を政府以外から調達すべしという風潮以前から
原発村のみならず薬害事件とか公害事件とかでも
事実を歪曲したり隠蔽したりして
公権力側に都合の良い説を唱える連中が居たのではないか。

外部資金調達の話と「御用学者批判」を結びつけるなんて
話のすり替えじゃなかろうか?