福島第1原発の事故でヨウ素131が飛散した際に、
内部被曝対策に安定化ヨウ素剤の代用にイソジンを飲めば良いとかの噂が流れて
それに対して放射線医学総合研究所(放医研)が2011年3月14日付けで
「ヨウ素を含む消毒剤などを飲んではいけません」
http://www.nirs.go.jp/data/pdf/youso-2.pdf
という文書を公表したことがあった。
どうせヨウ素の過剰摂取を危惧してのことだろうぐらいに思って
これについては特に調べたりしていなかった。
これに対して京都女子大の小波秀雄さんという方が
「イソジンは放射性ヨウ素からの防御に有効か」
http://www.cs.kyoto-wu.ac.jp/~konami/diary/?date=20110315
という記事を書いて、
放医研の説明の問題点を指摘されているのを最近知った。
小波さんは放医研の
1.うがい薬などの市販品は内服薬ではありません。これにはヨウ素以外の成分が多く含まれ、体に有害な作用を及ぼす可能性のある物質も含まれます。
2.たとえ飲んだとしても、ヨウ素含有量が少なく、放射性ヨウ素が集まるのを抑制する効果がありません。
という説明に対して
「しかし一般にうがい薬は一部が経口的に取り込まれることを念頭に置いて作られています。ある成分を「絶対に口に入れるな」ということであれば,そもそもうがいにも使えません。だからこの主張には疑問があります。わずかなら飲んでしまっても安全というのがうがい薬です。」
「 2. では量を問題にしているのに,そもそも定量的なことが何も書いてありません。ヨウ化カリウム剤では,放射線による障害を防止するための1日の服用量には 30 mg 程度となっています。(中略)そもそもヨウ化カリウムで放射能汚染を防ぐのは,数ケタ違いの大過剰な量の非放射性ヨウ素で薄めてしまおうということなので,1ケタ違いの10分の1の量であっても効果は期待できると考えられます。」
と疑問を表明されている。
そして放医研の対応について、
ヨウ素の過剰摂取による健康被害を懸念してのことだろうと理解を示しながら
「同研究所の発表は単に「やめろ」というだけで科学的な根拠がきちんとしていません。安全に服用するすべはあるわけです。」
と批判されている。
自分は細部を除いて小波さんの主張に賛成だ。
また小波さんの記事からは脱線するが、
自分は放医研が、
わかめ等の海藻にもヨウ素が含まれますが、十分な効果がありません。
と書いている点についても
こんぶ(ヨウ素含有量131.0mg/100g)ではなく、
わかめ(ヨウ素含有量7.79mg/100g)を引き合いにして
海藻の効果を否定的扱っている点にも情報操作の印象を持った。
とろろ昆布商品の説明を見ると(例:http://www.hitwave.or.jp/dousyou/sub5.html )
30g入りパックがおにぎり3~4個に使えるらしいので
とろろ昆布おにぎり1個で10mg程度の摂取が可能と思われるので
放医研の説明には疑問がある。
自分には放医研の態度は、
専門家の説明責任を放棄して
「素人は説明を聞いても理解できひんのやから黙って云うこと聞いとけ」といった
説明を受ける側の自己決定権を無視した
パターナリズム(父権主義)の典型のように見える。
緊急時なので丁寧な説明をしている暇がなかったとか
そういう言い訳はあるのかもしれない。
しかしヨウ素剤は、いわき市や富岡町などでは自治体の判断で配布されたが、
一方で、浪江町や飯館村等では配布されなかったようなので、
放医研のパターナリズムによって
自衛手段を講じる機会を失った人達がいる可能性を否定することは難しいだろう。