地獄のハイウェイ

科学・技術や趣味のことなど自由気ままに書き散らしています。

科学者が科学について語るときは専門家を尊重しろよ

小野昌弘という免疫学者が
放射能恐怖という民主政治の毒(終):問題の解決に向けて」
http://bylines.news.yahoo.co.jp/onomasahiro/20151231-00053002/
という文章を書いているので読んでみたが
非常に頭が痛い代物ですごく嫌な気分がした。
曰く
放射線原発関連問題を解決するうえで必須の要素は、専門家を専門家として尊重すること」
だそうだが、本当に専門家を尊重しているとは全く思えない。
というのは、註で放射線関連の基礎知識を学ぶための教材として出しているのが
田崎晴明とか菊池誠とかの物理学者の本なのである。
これらの著者は放射線の専門家ではなくて統計物理学とかの専門家だ。
これらの著書をきちんと読んだわけではないので中身自体を批判するつもりはないが
どうして放射線安全学の専門家の本を紹介しない?
これらの人が「免疫学の基礎知識」とか「免疫学のほんとう」とか書いたら
小野は推薦するのだろうか?
放射線関連の専門家が書いたものなら
例えば一般向けなら安斎育郎の『家族で語る食卓の放射能汚染』とか
多田順一郎の『わかりやすい放射線物理学』とか
あるいはかなり専門的だが小佐古敏荘が編集した『放射線安全学』とか
そういった専門家たちの著作が色々とある。
それなのに専門家の著作ではなくて
素人の著作を薦めて何が専門家の尊重だ。
そもそもイギリス在住の小野に
日本社会の中での色々な動きについて
詳細で正確なことが分かるのだろうか?
小野があれこれ言っていることは
言説や風評に関しての事実に関する根拠に基づいているようにも見えない。
こういうのが科学者の標準的レベルだとか思われたら
それこそ「科学者への不信」は不可逆的なレベルになりそうだ。
科学者といえども専門から離れれば科学ジャーナリストと大差ないのに、
越境してきて専門家ヅラは片腹痛い。
科学者を含め半可通な専門外の「専門家」を
専門家として尊重するのは本当に愚かしい。