地獄のハイウェイ

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科学の方法や基礎知識を伝えるに先端科学は必要ない

一部のネット上で話題になっている
内田麻理香「科学との正しい付き合い方」を読んだ。
個人的には賛同しかねるところも色々とあるが、
一般読者に向けてと言うより科学コミュニケーション業界内で
「マニアだけを対象にしていてはダメなんだ」
という警鐘を鳴らすのが主眼のように読めた。

ところで本書の中では科学リテラシー
「科学的知識」と「科学的思考法」に大別し
更に後者こそ科学リテラシーの中心と見るという記述があった。
それで思ったのだが「科学的思考法」を啓発するのなら
先端科学の研究紹介なんかよりも
十分に評価の固まった古典的業績の方が良いのではないか?

先人がどのような思考の筋道を通って発見をしたかとか
あるいは論争を決着させるために実験を工夫したかとか
そういうところに焦点をあてるのが
科学の方法とは何ぞやについて伝えるのに良いのではないか。
古典的な業績であればその分野の礎となっているわけで
分野の基礎知識を伝える事にもなる。
また分野にも依るが少し古い業績であれば、
使っている概念や数学的道具立ても極端に難しくはないから
先端科学よりも分かりやすくまたとっつきやすいと思う。

きちんと調べたわけではないが科学コミュニケーション分野では
科学者に社会への説明責任だとかアウトリーチとか要求しているためなのか
「先端科学を一般の人へ伝える」みたいな設定が多いような印象がある。
そういうのがあっても良いとは思うが
科学リテラシーの向上を目指すなら先端科学の話題である必要はないだろう。