地獄のハイウェイ

科学・技術や趣味のことなど自由気ままに書き散らしています。

哲学

最善の説明への推論としての枚挙帰納法

科学哲学方面で「最善の説明への推論」(inference to the best explanation、IBE)と呼ばれる推論のやり方がある。与えられたデータや証拠に対して、それを最も上手く説明できる仮説を選ぶといった推論のやり方のことで、1965年のギルバート・ハーマンの論…

科学的実在論論争が科学から見て無益であること

先日の記事「科学哲学は科学を理解するのに役に立つのか?」を書いたものの、何故そう思うのかについては説明していなかったので、そのあたりを少し補足しておこうと思う。 以前に「滅びゆく科学哲学:伊勢田哲治『科学哲学の源流をたどる』」でも書いたのだ…

科学哲学は科学を理解するのに役立つのか?

科学哲学と科学者との関係について「科学哲学は鳥類学が鳥にとって役に立つ程度しか科学者にとって役に立たない」(”The philosophy of science is just about as useful to scientists as ornithology is to birds.”)という比喩がよく知られている(R.ファ…

A.ローゼンバーグ『科学哲学』

自分は学生の頃から科学哲学に関心があって色々と本も読んできた。 伊勢田哲治の「科学哲学日本語ブックガイド」http://tiseda.sakura.ne.jp/PofSbookguide.html で紹介されている中の25冊は読んだことがある。 (読んだからと言って十分に理解しているとま…

滅びゆく科学哲学:伊勢田哲治『科学哲学の源流をたどる』

伊勢田哲治の『科学哲学の源流をたどる―研究伝統の百年史』を読んだ。出版元(ミネルヴァ書房)のPR誌に書いた軽い読み物をまとめたものだそうだ。同著者の『疑似科学と科学の哲学』が面白かったので期待して読んだが期待外れだった。学術書でもなければ教科…

帰納法の正当化について

帰納法という推論方法がある。 観察された事例を集めて、一般的な規則・法則を導き出す推論で、 これまでは「いつもAはB」だからという観察から、 「すべてのAはB」という結論を導くやり方。 帰納法は正当化できるのかできないのかという議論がある。 (科学…

過去200年で最も重要な哲学者

最近知ったのだが 「過去200年で最も重要な哲学者」というのがあった。 http://leiterreports.typepad.com/blog/2009/03/so-who-is-the-most-important-philosopher-of-the-past-200-years.html 1. ヴィトゲンシュタイン 2. フレーゲ 3. ラッセル 4. J.S.ミ…

予言タコから帰納法を考える

ワールドカップでドイツの勝敗を予言したタコの話がちょっと話題になっている。 ドイツと対戦国の国旗をつけたエサ箱のどちらに行くかで占うというもので 今回のドイツの勝敗を全て当てたということ。 しかしながらこのタコに本当に予言能力があると思ってい…

ニュートン力学が「偽」であることについて

自分は科学哲学についてはずっと興味を持ってきた。 ポパーの「科学的発見の論理」はもちろんのこと 「推測と反駁」も「客観的知識」も読んだし、 ラカトシュの「方法の擁護」も読んでいる。 その上でポパーの反証主義には賛成していないが、 反証主義という…

帰納法を疑わないのなら反証主義はいらないだろう

先日、懐疑主義と疑似科学についてちょっと書いたが、 「健全な懐疑主義」とか「科学的懐疑主義」というのは ヒュームとかの哲学的な懐疑主義とは違うということだ。 それで英語版のWikipediaを見てみると http://en.wikipedia.org/wiki/Scientific_skeptici…

ダーウィンを論じるための科学哲学

最近、E.ソーバーの"Philosophy of Biology"の翻訳 「進化論の射程-生物学の哲学」(松本俊吉、網谷祐一、森元良太訳、春秋社)がでた。 帯の宣伝文句に 生命科学が物理科学に代わって科学の主役に躍り出るに伴い、現代哲学の花形となりつつある「生物学の…

反証主義にさよならと言おう

科学と疑似科学の話題でがっかりするのは、 境界設定問題というポパー的フレームワークで 相変わらず反証主義が持ち出されて、 その上更にクーンのパラダイム論までが、 ポパー的フレームワークで、 反証主義への批判のように論じられてしまうことだ。 精神…

ファインマンをちょっと嫌いになる

物理学者のファインマンは、 「科学哲学が科学者の役に立つ度合いは、鳥にとっての鳥類学のようなもの」 “Philosophy of science is about as useful to scientists as ornithology is to birds.” という趣旨の発言をしたそうだ(出典はS.ワインバーグによる…

ノイラートの船は快速かも

dankogaiさんのサイト"404 Blog Not Found"の2007年03月16日付の記事 「科学=永遠のβ版」http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/50787697.html は非常に興味深いし、良いところを突いていると思う。 「確かに永遠のβ版には、100%保証はありえない。そ…