地獄のハイウェイ

科学・技術や趣味のことなど自由気ままに書き散らしています。

科学方法論

リー・マッキンタイア『「科学的に正しい」とは何か』

リー・マッキンタイア『「科学的に正しい」とは何か』(ニュートン新書)を読んだ。 www.newtonpress.co.jp 原題は”The Scientific Attitude”。常温核融合のような病的科学のケースや逸脱としての研究不正や地球温暖化否定論のような否定主義、疑似科学など…

科学的探究のレッスン

1.はじめに 色々なところでダメ科学を見掛けるときに思うことなのだが、そのダメさ加減のかなりの部分がデータの取り扱いにあることは物理や化学といった実験系の精密科学のセンスがあればわかりそうなものだと思う。そういう実験系精密科学のセンスはちょ…

そんなカーゴ・カルト・サイエンスなんか相手にするなよ

DavitRiceさんの「そんな動物みたいなことするなよ」という記事を読んで、元記事ではなくそこで紹介されている実験(?)に対して心底怒りが沸いてきたので、ちょっと思ったことを書く。 davitrice.hatenadiary.jp この本の第二章「欲望の化学」では、スーザ…

最善の説明への推論としての枚挙帰納法

科学哲学方面で「最善の説明への推論」(inference to the best explanation、IBE)と呼ばれる推論のやり方がある。与えられたデータや証拠に対して、それを最も上手く説明できる仮説を選ぶといった推論のやり方のことで、1965年のギルバート・ハーマンの論…

科学的実在論論争が科学から見て無益であること

先日の記事「科学哲学は科学を理解するのに役に立つのか?」を書いたものの、何故そう思うのかについては説明していなかったので、そのあたりを少し補足しておこうと思う。 以前に「滅びゆく科学哲学:伊勢田哲治『科学哲学の源流をたどる』」でも書いたのだ…

比率の比較に気をつけろ

世間で行われている比較の議論でよく見掛けるものに、比較される2つの集団で、ある現象の比率が一方で高いのに、もう一方では比率が低いということから何か片方の集団の特性を議論するというのがある。 この種の比較のやり方は、健康法だったり、受験勉強の…

需要曲線と供給曲線についての疑問

経済学の初歩として学ぶ需要曲線と供給曲線というのがあるが あれは縦軸が価格で需要とか供給の商品量が横軸になっているけれど 横軸の数値が変化した場合の縦軸の数値の変化を議論してるのではなくて 逆に縦軸の数値の変化に対する横軸の値の応答を議論して…

帰納法の正当化について

帰納法という推論方法がある。 観察された事例を集めて、一般的な規則・法則を導き出す推論で、 これまでは「いつもAはB」だからという観察から、 「すべてのAはB」という結論を導くやり方。 帰納法は正当化できるのかできないのかという議論がある。 (科学…

放射線防護のLNTモデルについて思ったこと

まず最初にお断りしておくが、自分は放射線防護の専門家でもなければ放射線生物学の専門家でもない。だからこれから述べることは放射線の半可通の意見だと思っていただきたい。 まず注意しなければならないのはLNTモデルで扱われている実効線量(Sv単位で表…

超光速ニュートリノの話題に寄せて-基本理論と近似

ミューニュートリノで超光速が観測されたとされるOPERA実験の話題は、読売新聞のような一般紙でも第一面を飾り、世間でも広く関心を持たれていることがよく判る。 2007年にも米フェルミ研のMINOS実験でも精度は劣るものの似たような報告があったそうなので、…

ホメオパシー信奉者は二重盲検を受け入れるか?

ホメオパシー関係で検索していて、 ※実名削除さんという方の 「科学はホメオパシーを否定できない」 http://informatics.cocolog-nifty.com/blog/2010/08/post-5cb3.html という記事が発端となって、 それに対してnext49さんという方が 「「情報学ブログ:科…

予言タコから帰納法を考える

ワールドカップでドイツの勝敗を予言したタコの話がちょっと話題になっている。 ドイツと対戦国の国旗をつけたエサ箱のどちらに行くかで占うというもので 今回のドイツの勝敗を全て当てたということ。 しかしながらこのタコに本当に予言能力があると思ってい…

ニュートン力学が「偽」であることについて

自分は科学哲学についてはずっと興味を持ってきた。 ポパーの「科学的発見の論理」はもちろんのこと 「推測と反駁」も「客観的知識」も読んだし、 ラカトシュの「方法の擁護」も読んでいる。 その上でポパーの反証主義には賛成していないが、 反証主義という…

被暗示性の亢進の検出について

昨日、治験薬に被暗示性の亢進作用がある場合には、調べようとする治療効果が本当はなくても、二重盲検でもプラセボよりも薬効が高く評価されるのではないかという疑問を書いた。 katsuya-440.hatenablog.com そこでそのような被暗示性亢進作用の検出方法に…

二重盲検に関するちょっとした疑問

代替医療とかの話になると二重盲検(double blind test)のことが話題になる。二重盲検とは、プラセボ効果を排除するために、テストされている治験薬と対照(プラセボもしくは標準薬)のどちらであるかを、被験者及び試験実施者の双方に知らせないで行うもの…

帰納法を疑わないのなら反証主義はいらないだろう

先日、懐疑主義と疑似科学についてちょっと書いたが、 「健全な懐疑主義」とか「科学的懐疑主義」というのは ヒュームとかの哲学的な懐疑主義とは違うということだ。 それで英語版のWikipediaを見てみると http://en.wikipedia.org/wiki/Scientific_skeptici…

パラダイムとはお手本のことである

パラダイムというとT.S.クーンのパラダイム概念が有名だが、 本来は「凡例」とか「模範」のことで、 そこから派生した用法としては品詞の語形変化表といったものもある。 例えばB.ラッセルの「記述の理論」は かつて「哲学的分析のパラダイム」とも呼ばれた…

反証主義にさよならと言おう

科学と疑似科学の話題でがっかりするのは、 境界設定問題というポパー的フレームワークで 相変わらず反証主義が持ち出されて、 その上更にクーンのパラダイム論までが、 ポパー的フレームワークで、 反証主義への批判のように論じられてしまうことだ。 精神…

活動としての科学か体系としての科学か

ムペンバ効果という、温度が高い水の方が より低温の水よりも短時間で凍るという現象をめぐって ネットでいろいろと議論があったようだ。 自分自身は話題になるまでこの現象を知らなかったけれど 一部では良く知られていた現象のようだ。 http://en.wikipedi…

A.ワイスマンの実験を振り返る

サイエンス・リテラシー云々で言えば、 実験のデザインの良し悪しを評価できることも重要だろう。 たとえ番組側に意図的な捏造がなくても、 TVの健康情報番組がアテにならないのは そこで行われる実験の大部分が デザインの悪いことから判断できるはずだ。 …