地獄のハイウェイ

科学・技術や趣味のことなど自由気ままに書き散らしています。

2006-01-01から1年間の記事一覧

高等教育の無償化条項はどうなったのか?

2005.04.05にも書いたが(https://katsuya-440.hatenablog.com/entry/1141385) 日本は国際人権規約を1979年に批准している。 この国際人権規約のうちの社会権規約(国際人権A規約)の第十三条2項Cでは、 「高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無…

監視も大事だが、合理的なルール作りを!

先日もとりあげた(身上調査はされていたの? - 地獄のハイウェイ) 早稲田大学・松本和子教授による研究費不正疑惑だが、 問題は不正経理から更に論文のデータ捏造疑惑にまで発展してきたようだ。 それにしても繰り返しになるが、どうしてそういう教授が 「…

ある告発

研究に関する内部告発というものを考える上で 過去の事例を検討するのも大事だが 今、現在起きている事件を考えたり報道することも必要だろう。 最近ある会合で次のような内部告発の事例を知った。 それは北浜克熙氏(元・阪大産研)の「川合研は嘘の枢軸」…

身上調査はされていたの?

先日もとりあげた(自浄能力は期待できるか? - 地獄のハイウェイ ) 早稲田大学理工学部教授による研究費不正疑惑の続報がでた。 不正受給額の一部を投資信託で運用していたというのも酷いが その教授が取締役をしていた関連企業に 不明朗な支払いがされた…

2010年問題(≒2007年問題)を再考する

団塊の世代の定年退職に関する、いわゆる2007年問題では 経験豊富な人材が大量に会社を去ることにより、 ノウハウを含む職場で必要とされる技術・技能の伝承に 支障が生じることが危惧されている。 もちろんそれはその通りなのだが、 この問題には重要な側面…

ポスドクの企業への就職活動は転職に近い

lanzentraegerさんの「うすっぺら日記」の[博士課程の就職活動について] が 博士課程在学者の就職活動に関する個人的体験を紹介されていて非常に興味深い。 その中の 「博士課程といえども学生なのだから、社会人のキャリアは当然まったくない。ところが、博…

自浄能力は期待できるか?

報道によると、総合科学技術会議の議員だった早稲田大学理工学の教授に 研究費を不正に受給した疑いが浮上しているそうだ。 報道では早大も調査に乗り出したとのこと。 問題の教授は文科省の「研究活動の不正行為に関する特別委員会」の委員にもなっていたそ…

認定こども園の保育時間

先日(6/9)、幼稚園と保育所の機能を併せ持った認定こども園に関する 「認定こども園設置法」が成立した。 文科省所管の幼稚園に保育機能を持たせたものや 厚労省所管の保育所の入所条件を緩和させたものを 「こども園」として認定するということのようだが…

5人目のビートルズ

報道によると6日、ビリー・プレストンが亡くなったそうだ。 ビリー・プレストンは「5人目のビートルズ」とも呼ばれることがあり 訃報でもそのように紹介されていた。 個人的にはこの「5人目のビートルズ」という称号は ジョージ・マーティンに相応しいように…

非メンデル遺伝が動物でも見つかった

先週号のNatureに 「マウスのエピジェネティックな変化のRNAを介した非メンデル遺伝」 M. Rassoulzadegan et al. "RNA-mediated non-mendelian inheritance of an epigenetic change in the mouse" Nature,441, 469-474 http://www.nature.com/nature/journa…

ある同時代人達

ノストラダムスが生前に予言者としての名声を得たとされる 1559年フランス王アンリ2世の死(槍試合での事故が原因)について たまたま面白い事を知った。 事故で重症を負ったアンリ2世の診察・治療には 近代外科学の祖と呼ばれるアンブロワーズ・パレと 近代…

理科離れと医学部人気

朝野を問わず理科離れの問題が声高に叫ばれる一方で、 大学受験に関しては広義の理科系に属する医学部の人気は相変わらず高い。 研修医の過労死事件(関西医科大学研修医損害賠償事件が有名)や 一部の勤務医の過酷な労働実態などが報道されるようになってい…

「日本の科学/技術はどこへいくのか」

中島秀人「日本の科学/技術はどこへいくのか」(岩波書店)を読んだ。 http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/02/5/0263450.html 科学史出身で最近はSTS(科学・技術・社会論)で活躍する著者の 比較的軽めのエッセー(主に東京電力の情報誌イリュームに執筆した…

ドタキャン

昨日TV放送されたK-1オランダ大会で、 アーネスト・ホーストと試合するはずだったボブ・サップがドタキャンで ピーター・アーツが急遽代役出場という何とも後味の悪い事件があった。 TVではアクシデントというアナウンスしかなく何とも不可解だったが サダハ…

大学教育に関する議論の前に

文科省の平成17年度学校基本調査速報に、 http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/001/04073001/001.htm 各種進学率の年度毎の推移を示したグラフがあった。 http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/001/04073001/pdf/sanzu05.pdf 今から50年前の昭和31年度を見…

大学教育における非科学的な神話

大学教育において「良い研究者であれば良い教育者」と考えることは、 何の「科学的根拠」もない神話の類だとしか言いようがない。 理系の場合、研究業績に関しては何かと問題があるにせよ「定量化」されているかもしれないが、 教育業績の方は今のところ定量…

巨神兵vs.ゴリアテ?

報道によると6月3日に開催されるK-1ソウル大会で セーム・シュルトvs.チェ・ホンマン戦が行われることになったらしい。 2m11cmのシュルトと2m18cmのホンマンで巨人対決という触れ込みのようだが 両者のキャリアを比べると首を傾げざるを得ないマッチメークだ…

記録に残るよりも記憶に残る試合

K-1ラスベガス大会に始まりPRIDE無差別級グランプリに至る 一連の格闘技興業をTV観戦して一番印象に残ったのは 昨日の高阪剛vs.マーク・ハント戦だった。 体重差もあってハントの打撃に敗れた高阪だが その強い執念というか折れない心が素晴らしかった。 闇…

神戸大学特許取り下げ事件

報道によると、 神戸大学工学部の大前伸夫教授が出願した、 ダイヤモンドを利用した鉄切断工具に関する特許で、 実際には実験していないデータが記載されていたことがわかり、 大学側の指導で出願が取り下げられたそうだ。 特許は自然現象の報告のためではな…

基礎科学の潜在的実用性を強調するのは?

国立大学法人化などの昨今の大学問題の中で 学問の社会への貢献を求める風潮に対して、 基礎科学の潜在的な実用性が主張されることを良く見かける。 確かに浮世離れした基礎科学の成果や手法が ひょんなことから実用化・商品化されることもないわけではない…

Johnny Got His Doctoral Degree

先日(博士号取得者のキャリアパス問題 - 地獄のハイウェイ)でも書いたが 博士号をとっても食えないというのが実情らしい。 産業界と直結している実学系(特に工学部系)の場合はともかく そうでない基礎科学系(特に理学部系)であると民間企業に就職する…

博士号取得者のキャリアパス問題

博士号取得者のキャリアパス問題について考えてみた。 そこで問題になっているのは概ね、 博士号取得者の就職するアカデミアのポストが少ないし 民間企業の博士号取得者の採用が低調なので 就職に困る博士号取得者が大量に出て困る、 という話である。 文部…

ゲジヒトはシラノを知っていたか?

昨日の記事で鉄腕アトムの「地上最大のロボット」に触れたので思いついた話。 「地上最大のロボット」(連載時は「史上最大のロボット」)の頃(1964~65年)が アトムが最も人気のあった時期だともいわれているが、 アトムが連載されていた雑誌「少年」では…

太陽系第10惑星(?)

報道によると、 太陽系の第10惑星(?)2003 UB313(現時点の愛称はZenaXena)について、 ハッブル望遠鏡による観測の結果、当初言われた程ではないにせよ 冥王星よりやや大きい直径約2400kmであることが分かったと、 NASAが発表したそうだ。 因みにNASAのペ…

マジョリティのマジョリティはマイノリティ

民主党の新代表に小沢一郎が決まったそうだ。このこと自体についてはいろいろな意見もあるけれどそれとは別に面白いことに気が付いた。報道によると得票数は小沢119票、菅直人72票だったそうだから、小沢は62.3%を得票したことになる。今回の結果を共同通信…

大学を通過点にする

教育者としての大学教員の実績評価をどう行うべきかという問題は 難しく考えればきりが無いけれど、 Makkurikuriさんが指摘するとおり大学は「教育機関としての最終到達点」だから 入試の実績といった形で教育実績を評価するのが難しくなっていることは確か…

大学教官は研究者か教育者か?

昨日、某大学で理系の教官をやっている後輩に会ったところ 学生にサンプルを破棄されてしまったということで凄く嘆いていた。 某共同研究利用施設で実験した貴重なサンプルを (なけなしの研究費と1年をかけて準備したサンプルとの話) 最終段階の次の測定装…

タイの選挙制度を見習っても良いかも

日本の選挙制度では、 候補者が定数に満たない場合には無投票当選となる(公職選挙法第百条)。 この方式だと例えばいわゆる無風選挙区で 有力候補一人と言葉は悪いがいわゆる泡沫候補しかいないとき 有力候補が事故や急病で頓死してしまうと ほとんど支持者…

研究費ミニマムを保証すべきだ

先日書いた「マタイ効果」(マタイ効果 - 地獄のハイウェイ)の 続きを考えてみた 「富める者はますます富み、貧しき者はますます貧しくなる」マタイ効果によって、 業績を上げ科学の発展に貢献した科学者に対して 研究資金の配分といった面から報償が与えら…

マタイ効果

科学において「富める者はますます富み、貧しき者はますます貧しくなる」こと、 今風に言えば勝ち組と負け組の格差がどんどん拡大することを、 自己流に「研究費のマルコフニコフ則」と名付けていた知人がいたけれど 科学社会学の分野では「マタイ効果」(Ma…